書誌情報
随筆/ノンフィクション/他
パリの砂漠、東京の蜃気楼
著者
あらすじ・概要
一歳と四歳の娘と始めたパリでの母子生活。
近づく死の影から逃れるための突然の帰国。
夫との断絶の中、フェスと仕事に追われる東京の混迷する日々……。
生きることの孤独と苦悩を綴った著者初のエッセイ集。
西加奈子さん、平野啓一郎さん推薦!!
自分を愛することを認めてくれる人はたくさんいるけれど、自分を愛さないことも認めてくれる人は稀有で、金原ひとみさんはその一人だと思う。
──西加奈子
壊れるように成熟してゆく魂。パリ―東京の憂鬱を潜り抜け、言葉は、痛みと優しさとの間を行き交いつつ、気怠く、力強い。比類なく魅力的な作品。
──平野啓一郎
【本文より】
帰宅すると、ネットでピアスを検索し、サイズ違いのセグメントリングとサーキュラーバーベルとラブレットを二つずつ買った。
とにかく何かをし続けていないと、自分の信じていることをしていないと、窓際ヘの誘惑に負けてしまいそうだった。
これまでしてきたすべての決断は、きっと同じ理由からだったのだろう。
不登校だったことも、リストカットも、摂食障害も薬の乱用もアルコール依存もピアスも小説も、フランスに来たこともフランスから去ることも、
きっと全て窓際から遠ざかるためだったのだ。そうしないと落ちてしまう。潰れてしまう。ぐちゃぐちゃになってしまうからだ。