書誌情報
ダッシュエックス文庫
メルヘン・メドヘン
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著者
あらすじ・概要
鍵村葉月は物語をこよなく愛する、妄想過多な正統派ぼっち少女。
家族との関係もうまくいかず、物語の世界に逃げ込む日々を送っていた。
ある日の放課後、ファストフード店で読書に励もうとした葉月は、全身をローブで覆った少女に出会う。
しかも、その少女は葉月以外の人には見えないようだった。
葉月は「魔法使い」に会えたと喜び、友達になってほしいと申し出るのだが、少女は驚き逃げてしまう。それを追い、たどり着いた図書館にはある学園への扉があった。
その扉の先にあったのは、世界中の童話の「原書」に選ばれた少女たちが「原書使い」(=メドヘン)になることを目指すクズノハ女子魔法学園。そして、葉月は『シンデレラ』に選ばれたと告げられるのだが――!
「原書」と共に自らの「物語」を紡いでいく、夢と魔法と青春のファンタジー、開幕!
ここからは物語の冒頭を一部公開!
鍵村葉月には友達がいない。
少ないとかごくわずかしかいないとか、微妙な関係の相手はいるがそれを友達と呼んでいいのかわからないとか、そんな生易しいレベルではなく、あまつさえ友達はいないけど恋人はたくさんいますとか、そういったライトノベル的ハーレムキャラというわけでもない。
十五才の現在、本当に完膚なきまでに、ただの一人も友達がいないのである。
なにせ私は物心ついた頃から変な子だと言われてきた。
とくになにをするでもなく空を見上げていたり、道ばたに座りこんでいつまでも動かなかったり、ボーッとしていることが多かったからだろう。
そういう時、私の頭の中ではいろいろな『物語』が動き出している。
こんもりとした入道雲の中には真っ白なお城があって、そこでは背中に羽のある人たちが暮らしているのだとか、アリさんたちが一列に並んで歩くのは大昔に魔法をかけられたせいだとか、なんの役に立つわけでもない妄想と空想の世界にひたっていた。
そんな風になったきっかけは、たぶんお母さんだ。
お母さんは私にたくさんのお話を聞かせてくれた。
楽しい話、悲しい話、怖い話、不思議な話。有名なお話だけじゃなくてお母さんオリジナルのお話もいっぱいあった。
そしてお母さんは、必ず最後にこう言った。
「葉月、自分の『物語』を見つけなさい」
小さかった私はその言葉の意味を一生懸命に考えた。
考えに考えて考えぬいたあげく辿り着いたのが「空想」だった。
出会うものはなんでも空想の餌食になった。そして空想は空想を呼び、あれもこれもそれもまざってごっちゃになっていくのだ。
お母さんが亡くなってしまって、私の空想癖はさらに悪化した。
今では空のお城はジェット推進で空を飛び、騒音に悩まされた王様はストレスで髪の毛と羽に深刻なダメージを受けている。アリさんたちは魔法の力を逆利用して行列のできるラーメン屋さんをはじめている。我ながら意味不明だ。
本編に続く