書誌情報
集英社オレンジ文庫
あの夏の日が、消えたとしても
ご購入
著者
あらすじ・概要
「千鶴のことが好きだよ」。夏休み直前、海で花火をした日に、高2の千鶴は律に告白される。けれど、一年前、千鶴は律に振られていた。実は、律はその日の記憶を失っていて――!? 一方、千鶴と同級生の華美は、海が見えるビルの屋上で月村と出会う。過干渉な母親と過ごしてきた華美と、人の死にトラウマを抱えている月村。毎日会ううちに、お互い、人には話せない痛みを共有する関係に。そして、一年後に花火をする約束を交わすけれど…。
消えた夏の日をめぐる、高校生の恋と青春物語!
(本文より)
思い出の重さは、ひとぞれぞれちがう。
「おれはさ、千鶴のことが好きだよ」
となりにいる律が、あたしをまっすぐに見据えて言った。
――かつて、あたしを振ったことを忘れてしまっているかのように。
遠くで花火が弾ける音がした。砂浜で友だちが花火を楽しんでいる。去年は夏休みのお盆明けだったけれど、今年は夏休みに入る直前で、それでも再現感があるな、と思った。
あたしの気持ちは、去年の夏からなにもかわっていない。
胸にはまだ、律への想いと、去年のあの夏の日の記憶が、痛みが、はっきりと刻まれている。