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集英社学芸単行本

ほんまに「おいしい」って何やろ?

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著者

著:村田吉弘

あらすじ・概要

著者の村田氏は、京都の老舗料亭「菊乃井」の跡取りとして生まれ、「ほんまにおいしいものって何や?」ということを追及して70余年。
世界中の美食を食べ歩き、味覚そのものを研究するアカデミーを作り、「日本料理店」として本店・支店で合わせて7つものミシュランの★(星)をとった「料理界のカリスマ」である。
アラン・デュカスをはじめフランス料理のカリスマ・シェフたちとの交流も深く、アカデミーの仲間たちとともに「和食」をユネスコの無形文化遺産にも押し上げた。
広島サミットの料理は各国首相に絶賛された。料理界を代表する文化人として史上初めての黄綬褒章を受け、文化功労者にもなり、「京都の伝統や日本文化のご意見番」としても知られている。
そんな村田氏も若き頃は、フランス料理のシェフをめざして行ったパリで放浪生活を送り、ソルボンヌの学食やフランス料理のレストランで受けた人情の温かさに感動する。
やがてフランス料理の文化的な奥深さに感じ入り、自分がなすべき仕事は「日本料理」と自覚する。
日本に帰ってきたあとは、修行先で包丁を突き付けられるほどのいじめにあうが、人の嫌がることを率先して引き受け何倍も働き、次第に周囲に実力を認められていく。
初めて店長を任された新店が閑古鳥が鳴く中、夜の商売のお客から大会社の会長まで、皆から何かを教えられ、やがて一流の料理人として、経営者として成長していく。
昨今の、おおげさに「うま~い、おいしい」を繰り返すテレビのグルメ番組や、「お金さえだせば、おいしいものを食べられる」と勘違いするグルメ・ブームには、ぴしゃり!とダメだしをしつつ、身近な給食や家庭の手料理まで「おいしさの本質」を追及し、後進を育てている。
抱腹絶倒! 歯に衣を着せぬ食の世界と波乱万丈な人生を語り、食の本質、食の未来に熱く迫る! (豪華カラー口絵つき!)

村田吉弘(むらた よしひろ)プロフィール
「菊乃井」三代目主人。1951年京都生まれ。立命館大学在学中にフランス料理研究のため渡仏。帰国後、日本料理をめざし1993年父親のあとを継いで「菊乃井」三代目主人となる。現在、「菊乃井 本店」、「露庵 菊乃井」、「赤坂 菊乃井」を統括する。「ミシュランガイド」では、京都、東京で併せて7つの星を獲得している。2017年にはお弁当や甘味を供する「無碍山房」を開店。海外での日本料理の普及活動、地域の食育活動など、料理人の育成、地位向上の為に精力的に活動を行っている。2012年「現代の名工」「京都府産業功労者」、2013年「京都府文化功労賞」、2014年「地域文化功労者(芸術文化)」、2017年「文化庁長官表彰」を受賞、2018年「黄綬褒章」を受章。同年、「文化功労者」に選出される。著書に『京都料亭の味わい方』(光文社新書)、『割合で覚える和の基本』(NHK出版)ほか多数。

前略
第一章 広島サミットでお好み焼きをやりました
突然、広島サミットのオファーが来た
まるでオペラの「引っ越し公演」のような
「広島行きも、また1万5000円かいな」
G7の首脳の皆さんと握手した
仲居さんも含めての「京料理」
味覚は「いい加減」な感覚やから
京都の料亭は町衆と共にある
世界の料理界のテーマは、味噌、醤油、麹菌
麹菌と広島レモンで冷たい味噌汁を作る
やっぱり、広島はお好み焼きや
岸田さんが一番喜んでくれたんとちゃうか
第二章 料亭、料理屋、料理人って何や?
料理屋、料亭は「公共」のもの
料理屋としての良心は
東京の貧富の差と、「公共」の崩壊
京都の料亭はつぶれない
創業の「一代目」さんと老舗の「ぼん」
京都の「ぼん」パワー
「京料理の危機」を乗り越えるために
学者と料理人
料理屋の料理と家庭の料理
京都をそのまんまパリに持って行ったものの……
五つ目の味覚「うまみ」を世界へ
料理は常に新しい
第三章 料理人修業「青春篇」
いざフランスへ、「ぼん」の旅立ち
パリの安ホテルの屋根裏部屋
色黒、ギョロ目の薩摩の男
「これ、全部チーズや」
「ノン」と何度も追い返されて
「鴨のオレンジソース」、うまいわ!
離乳食は「子羊の脳みその塩茹で」
バナナを失敬したり、教会の軒下で寝たり
外国人に気後れしなくなった
第四章 料理人修業「立志篇」
年下の「先輩」が出刃包丁で
汚油脂にまみれて
「人に認められる」ということ
客が一人も、来ない
娼婦、男娼、鉢巻きのおっちゃん、会長
「自分なりの料理を作らんかい」
第五章「和食」は、無形文化遺産にふさわしい
フランス料理がユネスコの「無形文化遺産」になった
韓国の「宮廷料理」に先行されて
「日本料理」ではなく「和食」でいこう!
一月一日の朝、国民全員が「雑煮」を食べる文化
文化にお金をかける国、かけない国
ご飯に牛乳の給食は、おかしい
「お茶にしようか」
第六章 「私の食の履歴書」
私の「家庭の味」は「菊乃井」のまかない
“おふくろの味”は「ガランデ」
アイスクリームにつられて古美術店巡り
「跡取り息子」のお雑煮の親芋
「野菜に失礼なことをするな」
天龍寺の老師からの「食事招待」
湯豆腐鍋の底の「〇」
第七章 「おいしい」言い過ぎちゃうか?
炊きたての白いご飯
「味ばか」と「残心」
「うまい」と脳の関係
「甘い」感覚は最後まで残る
母乳の「おいしさ」は快感
油はたしかに「うまい」、けれど……
油に頼らない「おいしさ」の追求
プロの料理人は「本当にうまいもの」は作れない
「おいしい」はファジーの世界
第八章 料亭、料理屋はハッピーハウスである
「いい商売」の「ハッピーハウス」
親父もおじいさんも、みんな大事な師匠
商売は「相身互い」、お互いにハッピーや
ごまかし、手抜きはあかん
「ワーカー」を育てているわけではない
「心の栄養」も「体の栄養」も
料理はメッセージです
追伸