2022.10.14

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50年の時を経ても色あせない、集英社の文化遺産『ベルサイユのばら』

『ベルサイユのばら』は少女漫画の金字塔

「週刊少年ジャンプ」に代表される少年漫画のイメージが強い集英社ですが、少女・女性漫画についても強力な作品を数多く出版しています。1955年創刊で70年近く女の子に夢を届けてきた「りぼん」をはじめとする雑誌からは、『ちびまる子ちゃん』『ときめきトゥナイト』『花より男子』『NANA』『君に届け』と言ったビッグタイトルが生まれてきました。

中でも少女漫画の金字塔と呼ばれているのが、シリーズ累計発行部数2000万部を誇る『ベルサイユのばら』(池田理代子・著)。1972年に連載を開始し、今年誕生50周年を迎えた本作は、少女漫画の歴史の数々を塗り替えた名作であり、集英社の文化遺産とも呼ぶべき存在です。今年9月17日からは、六本木・東京シティビューで「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展 ベルばらは永遠に』がスタート(11月20日まで)。さらに、『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』も発売され、すでに重版がかかるほどの人気を博しています。

『ベルサイユのばら アニバーサリーブック』©池田理代子プロダクション/集英社

『ベルサイユのばら アニバーサリーブック』©池田理代子プロダクション/集英社

連載当時「歴史ものはうけない」と言われていた

『ベルサイユのばら』が連載されたのは、1972年4月から1973年12月、少女漫画誌「週刊マーガレット」(現「マーガレット」)にて。スタート時、池田理代子氏が編集者から「歴史ものはうけない」と言われ、「必ずヒットさせます」と返したのは有名な話。フランス革命を背景にした歴史ドラマは、連載開始当時から少女たちの心を掴んで大ヒットしました。

池田氏が『ベルサイユのばら』の着想を得たのは、高校2年生のとき。夏休みの課題図書のひとつだったツヴァイク・著『マリー・アントワネット』を夢中で読み、「いつかアントワネットの生涯を描きたい」と夢見たそう。準備とリサーチに2年もの時間をかけて連載をスタートさせただけあり、歴史的事実に基づいた物語は読者を深く感動させました。さらに、池田氏が創作した男装の麗人・オスカルをアントワネットと対照的なキャラクターとして登場させ、ふたりの女性の人生を軸に、壮大な群像劇に仕上げました。

ベルサイユのばら1巻 ©池田理代子プロダクション/集英社

記念すべき1巻 ©池田理代子プロダクション/集英社

親から子、またその子へ読み継がれる理由

ターゲットにしたのはあくまでも子どもたち。ただ、子ども向けに難しい語句の使用を避けたりすることはなく、セリフも「フリガナがついているのだから」と、池田氏は漢字で書き続けたと言います。「読み捨てられない、ずっと読み継がれる作品を描こう」という思い通り、母から子へ、そのまた子へと、幅広い年代で受け継がれているのも事実。その理由のひとつは、読む年代によって、心震えるポイントが違うから。アントワネットとフェルゼンの恋に夢中になったり、身分を捨てて民衆の側につくオスカルに感情移入したりするなど、どの角度から見ても深い味わいと輝きを放っているのです。

池田氏は、45歳で音楽大学を受験し、声楽家としてのキャリアをスタートさせたことでも有名。長年、氏と仕事をしてきた編集者は「ものすごくピュアで真面目で勉強熱心な方」と証言します。その言葉通り、『ベルサイユのばら』を週刊連載するかたわら、画力を上げるために石膏デッサンや油絵など、本格的な絵の勉強をしていたというから驚き。原画を見ると、小さなコマの絵まで裏側に何度も習作を描くなど、絵のレベルを上げるための努力を惜しまなかったことがうかがえます。ストーリーはもちろん、池田氏の圧倒的な画力こそが、『ベルサイユのばら』の人気を支えていたのです。

メディアミックスのパイオニア

今でこそ漫画のアニメ化や舞台化は珍しくありませんが、メディアミックスの走りとなったのは、やはり『ベルサイユのばら』です。連載終了の翌年、1974年に宝塚歌劇で舞台化されると、空前のブームを巻き起こし、社会現象となりました。さらに、ベルサイユ宮殿でロケをして実写映画化されたり、TVアニメがイタリアやスペインなどでも放映され、世界中にファンを拡大。

『ポーの一族』(萩尾望都・著)、『ときめきトゥナイト』(池野恋・著)など、近年、人気作が数十年の中断を経て再開する動きが少女漫画には縷々見られますが、その続編ブームの発端となったのも『ベルサイユのばら』。「マーガレット」創刊50周年記念として、2013年4月発売の別冊付録に、アンドレが主役の短編を掲載。それをきっかけに、40年ぶりの新シリーズ『エピソード編』が始動しました。

ベルサイユのばら エピソード編11巻 ©池田理代子プロダクション/集英社

オリジナルの最終10巻から40年を経て再始動し、エピソード編11巻が2014年に発売
©池田理代子プロダクション/集英社

時を経ても色褪せないのは、池田氏が作り上げた普遍的なストーリーと画力はもちろん、少女漫画界全体に影響を与えるような、新しい取り組みに積極的にチャレンジしてきたから。『ベルサイユのばら』は、60年、70年…100年経ってもきっと、その時代の読者を、ときめきへといざなうはずです。

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