2021.08.25

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子どもの読書の間口を広げて10周年「集英社みらい文庫」

子どもたちに本の楽しさを知ってもらうために

「大人に読まされるのではなく、子どもが自ら進んで手にしたくなるような、エンタメ小説を作りたい」との思いで創刊した「集英社みらい文庫」。この小中学生のための新しい読みものシリーズが、2021年に10周年を迎えました。 今でこそ広く知られるようになったレーベルですが、児童文庫としては後発。創刊の2011年当時には、老舗の「岩波少年文庫」、すでにオリジナルのヒット作も生まれていた「講談社青い鳥文庫」「角川つばさ文庫」などの強力な先達が市場を大きく占めていました。

そんななか、集英社独自のカラーはどうすれば打ち出せるのか? また、普段から本を読んでいる子どもだけでなく、本を読まない子どもにも手に取ってもらい、読書の楽しさを知ってもらうためには、どんな本を作ったらいいのだろうか──? 大きなチャレンジを抱えて誕生したのが「みらい文庫」です。 模索しつづけていくなかで、子どもたちを取り巻く環境も刻々と変わっていきます。特に、ゲームや漫画、アニメ、YouTube、SNSといったコンテンツがあふれる昨今、子どもたちを本に振り向かせることがますます難しくなることを感じながら、試行錯誤を重ねていったのです。

まず、大きな武器となったのは、人気漫画のノベライズでした。ジャンプ作品をはじめとした集英社の人気漫画は子どもたちの間で圧倒的な人気を誇っています。そのノベライズなら、普段は活字に馴染みがない子どもにも手に取ってもらえる。そう考え、創刊ラインナップの10冊のうち3冊が、『ちびまる子ちゃん』『ONE PIECE』『君に届け』の3作品のノベライズとなりました。 この試みは大成功! 以来、ノベライズは「みらい文庫」の柱となり、累計100万部を突破する作品も出てきました。 また、漫画に限らず、人気バラエティ番組などにも手をのばし、ノベライズの世界はどんどん広がっています。

また、「みらい文庫」オリジナル作品の制作にも力を入れています。たとえば少女漫画を読んでいるようなドキドキ感があるもの、結末が見えないスリルを楽しめるものなど、子どもたちが興味を持ちやすいテーマや世界観を活字で楽しんでもらえるよう、創刊当初から蓄積してきたノウハウをもとに、オリジナル作品を拡充しています。

左:『海色ダイアリー』より 右:『迷宮教室』より

さらに連綿と受け継がれてきた古典的名作もぜひ現代の子どもたちに読んでほしいという考えのもと、表紙カバーのイラストを現代風にしたり、登場人物や物語の流れをキャッチーな挿絵で補足したりと、親しみやすくする工夫を施しています。

『坊っちゃん』や『三国志』もイラストを工夫し、手に取りやすくなっています。

そして、さまざまなアプローチで制作した本をより多くの子どもたちに届けるために、LINEやYouTubeといった時代に合わせたツールを使い、本作りとあわせて情報発信も積極的に行っています。

公式YouTubeチャンネル「みらい文庫ちゃんねる」では、作品紹介ムービーやボイスドラマを公開。
ボイスドラマではキャラクターに声をつけることで作品の世界観をより身近に感じてもらえます。

読者参加型の10周年記念企画

たくさんの読者に「みらい文庫」の本を読んでいただいたことで、2021年3月に創刊10周年を迎えることができました。 そこで「みらい文庫」をご愛読いただいた読者に感謝を伝えたい、さらに多くの子どもたちに「みらい文庫」を知ってほしいという思いを込めて、以下のような10周年企画も実施しました。

人気作家にトツゲキ★インタビュー!!

「みらい文庫」で執筆している作家陣が、読者の質問に答える企画。「どうして作家になったの?」「どんなときにアイデアは思いつくの?」「どんな子どもだった?」といった素朴な疑問から、普段は見えない作家さんの一面を引き出し、身近に感じてもらうことができました。

みらい文庫編集部スタッフ・ミクと一緒に本を作ろう!

“小学生の女の子を応援する本”を企画中の「みらい文庫」編集者・ミクが、読者から募った意見やアイデアを織り込みながら本を作っていく様子を1週間ごとにレポート。「どんなお話が読みたい?」「登場人物の女の子の名前を考えてね!」など、毎週出される質問に読者が回答し、その結果を反映して『だいすきなキモチ〜ウチらの宝物〜』という本が完成しました。

人気シリーズのあのキャラが答える! 明るいお悩み相談室

読者の悩みに人気シリーズのキャラクターが答える企画。子どもたちが抱えているリアルな悩みにキャラクターたちが掛け合いを繰り広げながら楽しく回答し、キャラクターたちとお話ししたいという読者の夢をかなえることができました。

10周年特設サイトはこちら

読書の楽しさを“みらい”の子どもたちへ

10周年を迎えた「みらい文庫」が掲げた言葉は「ページをひらけば、ともだちがいる」。本を開き、ページをめくってワクワク・ドキドキした気持ちや、知らない世界に足を踏み入れた高揚感など、子どもの頃に得た読書体験は大人になってからも多くのものを残してくれます。

読者の声をできるだけ頻繁に近しく聞いて企画に生かすため、他部署と連携してシンクタンク「こどもみらい会議」を興すなど、さまざまな挑戦をしています。アンケートやふれあいの会で聞こえてきた言葉は「子どもたちはとにかくおもしろいものを求めている。それは漫画も小説も変わらない」「子どもたちの心に寄り添えるよう、社内で協力していこう」など、実に励まされるものでした。

これからも「みらい文庫」は子どもと読書の架け橋になるべく、真摯に本作りと向き合っていきます。

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