2021.04.15

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「こども」「みらい」「出版」をキーワードにした社内シンクタンク「集英社こどもみらい会議」

 

新企画創出プロジェクトから生まれた組織

集英社では「りぼん」「最強ジャンプ」「みらい文庫」をはじめ、学習まんがを含む児童書など、低年齢読者向けの雑誌や書籍を多数発行しています。各編集部では読者に興味・関心事などをヒアリングし、魅力的なコンテンツづくりのために活用してきました。しかし、「集英社」全体として総合的にこどもたちに向きあう取り組みは行われていませんでした。

そんななか2016年に新たにスタートしたのが「集英社こどもみらい会議」です。きっかけは、社員を対象に呼びかけられた「新企画創出プロジェクト」でした。このプロジェクトは、自由な発想で企画を広く集め、実用化・事業化につなげようというもので、数多くの企画が検討されました。その中で採用されたいくつかの企画のうちのひとつが、「集英社こどもみらい会議」だったのです。各部署のメンバーをつなぐ、いわば「社内シンクタンク」であるこの企画は、その後も継続的に活動しています。立ち上げ時からの中心メンバーは存在しますが、多くのひとが出入りする“開かれた組織”として、活動内容もフレキシブルなのが特徴。まんが、児童書、学芸、新書、人事、編集総務など、メンバーは部署の垣根を超えて集まり、こどもの実態調査、読者研究、社内セミナーなどを実施し、社員への情報共有を行っています。

こどもたちを知るために――メンバーの発案で行われるさまざまな活動

1. こどもアンケート調査

こどもの読者、特に小学校中学年〜高学年を中心にした読者研究、世代研究を実施しています。集英社発行媒体において定期的に行われるこども読者のアンケート、より広い範囲の小学生を対象とした実態調査を行い、分析結果をレポートにまとめ、社内に共有しています。

2.社内セミナー

部署の垣根を越え、研修会や分科会、講演会などを不定期で開催。「こども」「みらい」「出版」にまつわる問題や可能性を広く研究しています。一方通行の講演スタイルではなく、おたがいの意見交換ができるような場を目指しており、たくさんの社員が参加しています。

3.夏休みイベント

集英社こどもみらい会議の活動について、社内でもっと知ってほしいと企画されたのが、社員のこどもたちを対象に、2019年の夏休みに実施した手作りイベント。約30組の親子が参加し、まんが原稿のペン入れ体験、有志の社員メンバーによるマジックショー、読み聞かせなどを行いました。また、親子一緒のランチタイムをとり、異なる部署の社員同士の交流促進にもつながりました。

「こども」を入口に、社内の「横のつながり」を

「こどもみらい会議」企画発案のきっかけとなったのは、「こどもが本を読むことについて考えるのが仕事の入口のはずなのに、こどもを対象読者とする各部署間の交流がないのは残念」「モニター会やアンケートで感じるこどもたちの“雑誌離れ・まんが離れ”の現実をもっと真剣に考えたい」「社内の各編集部がもっているノウハウや、アンケートデータを共有したい」など、こどもたちに向きあう社員たちの問題意識の高まりでした。

小さい頃にたくさん本にふれる機会があったこどもたちは、将来にわたって長く集英社の出版物の読者・ファンになってくれるかもしれない大切な存在です。書籍、雑誌、まんがが好きなこどもたちをできるだけ多く育てることが、出版界全体のみらいを支えます。

当初は各編集部の情報をたがいに持ちより、定期的にミーティングを重ねることから手探りでスタートした活動ですが、各部署から「こども」関連の情報が寄せられるようになったり、子育て中の社員同士の交流が広がるなど、部署の垣根を越えたひとのつながりが生まれています。さらに、素顔のこどもたちと直接触れ合うことで、新たな発見もありました。「本を読み進める速さは、本当にそれぞれちがう」「親の目が離れた場所での行動が多くなる小学校中学年~高学年のニーズをとらえるのは最も難しいこととされている。そんな彼らの反応を直接見られるのは貴重な体験」。
何よりも大きな変化は、社内全体で小学生の読者に目を向ける機会が増えたこと。「人気まんがのノベライズがきっかけで、文字ものの本を手にとってくれる子も多い。こどもに読まれる書籍をつくっていきたい」など、まんがと書籍の部署がタッグを組んだ取り組みが、ますます活発化しています。

社内活動を元に社会にも発信していきたい

これまで社内向けに行われてきた「集英社こどもみらい会議」の活動ですが、今後の目標は、社外活動につなげることです。毎年行われている「ジャンプフェスタ」などのイベントの中で、親子で楽しめるアトラクションに新たに取り組めないか? この会議で共有された知見をベースに、商品やコラボなど世界中のこどもたちを楽しませる発明ができないか?……など、夢は広がっています。

「集英社こどもみらい会議」のロゴデザインは、本や雑誌の木の上に、おとなの鳥たちが集まり、こどもの鳥たちの「みらい」について話しあう様子を表現しています。これは、集英社の「集」の旧字体・雧が木の上に隹(ふるとり)が3羽とまっている姿を字源とすることから着想を得たもの。

まず、一番大切なのは、こどもたちをよく知ること。「集英社こどもみらい会議」は、今後もおとなの誰もがこどものみらいについて話しあえる「場」としての活動を続けます。

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